○金沢大学微生物等安全管理規程
(平成16年11月26日規程第157号)
改正
 
 
目次

第1章 総則(第1条?第2条)
第2章 安全管理体制(第3条-第7条)
第3章 安全管理基準(第8条-第17条)
第4章 健康管理(第18条-第21条)
第5章 その他(第22条?第23条)
附則

第1章 総則
(趣旨)
第1条 この規程は,金沢大学(以下「本学」という。)における微生物等の取扱い及び安全管理に関し必要な事項を定めるものとする。ただし,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)にて定める特定病原体等の取扱いについては,別に定める金沢大学特定病原体等安全管理規程によるものとする。
(定義)
第2条 この規程において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1) 「微生物等」とは,細菌,真菌,ウイルス,原虫を含む寄生虫,プリオンをいう。
(2) 「病原性」とは,微生物等が何らかの機構により,人又は動物?植物に危害を及ぼすことをいう。
(3) 「BSL」とは,微生物等を使用する実験(以下「実験」という。)におけるバイオセーフティーレベルのことをいう。
(4) 「ABSL」とは,動物を用いた実験におけるバイオセーフティーレベルをいう。
(5) 「特定病原体等」とは,感染症法で規定する一種病原体等,二種病原体等,三種病原体等及び四種病原体等をいう。
(6) 「指定実験室」とは,別表2付表1及び別表2付表2に定めるBSL2又はABSL2(以下「レベル2」という。)からBSL3又はABSL3(以下「レベル3」という。)までの実験を実施する室をいう。
(7) 「微生物等管理区域」とは,指定実験室及びその他の微生物等の安全管理が必要な特定の区域(以下「管理区域」という。)をいう。この場合において,管理区域には,微生物等を保管又は滅菌する区域が含まれる。
(8) 「取扱者」とは,本学において微生物等を取り扱う本学国际足球_虎扑体育-中国体彩网官网推荐,学生(授業によりレベルの低い微生物等を取り扱う場合を除く。),他機関から受け入れた研究員等をいう。
(9) 「取扱責任者」とは,取扱者によって実施される実験の安全管理上の責任を負う者(本学の専任教員に限る。)をいう。
第2章 安全管理体制
(学長の責務)
第3条 学長は,本学における微生物等の取扱いに係る安全管理に関する業務を総括し包括的な責任を負う。
(委員会の設置)
第4条 学長は,この規程の適正な実施のために,金沢大学微生物等安全管理委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会の組織,運営等に関し必要な事項は,別に定める。
(実施部局の長の責務)
第5条 実験を実施する部局等の長(以下「部局長」という。)は,当該部局における微生物等の安全管理に関し包括的な責任を負う。
(取扱責任者)
第6条 取扱責任者は,実験に関し,第10条に規定された届出,申請を行わなければならない。
2 取扱責任者は,実験における微生物等の安全管理に関し責任を負う。
(取扱者)
第7条 取扱者は,管理区域内で微生物等を取り扱う場合は,この規程に適合する方法によらなければならない。
第3章 安全管理基準
(微生物等のBSL分類及びABSL分類)
第8条 微生物等の取扱いに関わる基準は,別表1の付表1から4に定める。
2 BSLの分類は,別表1に定める基準に基づいて,別表2の付表1に定める。
3 ABSLの分類は,別表1に定める基準に基づいて,別表2の付表1及び付表2に定める。
4 委員長は,微生物等のBSL分類及びABSL分類を変更する必要が生じたとき,及び,別表2に記載のない微生物等のBSL分類及びABSL分類を決定するときは,委員会に諮り,実験方法及び取扱いの量等により当該微生物等の取扱い分類を別に決定する。
(実験室等の安全設備及び運営に関する基準等)
第9条 実験を行う室は,別表1の付表2,付表3及び別表3に定める基準,動物を用いた実験を行う室は,別表1の付表4及び別表4に定める基準に従って必要な設備を整え,別表5に定める基本的事項に従い運営しなければならない。
2 実験室を管理する部局の長は,当該実験室をレベル2の微生物等取扱実験室として使用するときは,別記様式第6号により,学長に届け出なければならない。
3 実験室を管理する部局の長は,当該実験室をレベル3の微生物等取扱実験室として使用するときは,別記様式第7号により,学長に申請し,承認を受けなければならない。
4 実験室を管理する部局の長は,第2項の届出事項又は第3項の申請に係る事項を変更する必要が生じるときは,新たに学長に届出又は申請し,承認を受けなければならない。
5 実験室を管理する部局の長は,レベル2及びレベル3の微生物等取扱実験室としての使用を終了するときは,別記様式第8号により,学長に届け出なければならない。
(微生物等の取扱手続)
第10条 本学においては,BSL4又はABSL4に該当する微生物等の取扱いはできないものとする。
2 取扱責任者は,レベル2の微生物等を新たに用いて実験し,又は新たに保管しようとするときは,別記様式第1号により,あらかじめ,委員会の委員長(以下「委員長」という。)に届け出なければならない。
3 取扱責任者は,第2項の届出に係る微生物等の実験又は保管が終了したときは,別記様式第2号によりその旨を委員長に届け出なければならない。
4 取扱責任者は,レベル3の微生物等を,新たに用いて実験し,若しくは新たに保管し,又は学内他部局等及び本学以外の機関へ供与しようとするときは,別記様式第3号又は別記様式第4号により委員長に申請し,承認を受けなければならない。
5 取扱責任者は,第4項の申請に係る事項を変更する必要が生じたときは,新たに委員長に申請し,承認を受けなければならない。
6 取扱責任者は,第2項から第5項の申請(届出)について,部局長を経て,委員長に提出するものとする。
7 委員長は,第4項又は第5項の申請があった場合において,委員会の審査を経て,必要に応じその内容の一部を変更して承認することができる。
(微生物等の運搬)
第11条 レベル2以上の微生物等の運搬については,万国郵便条約の通常郵便に関する施行規則(平成19年8月31日号外総務省告示第511号)によるほか,WHOの「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス」(以下「WHO輸送ガイダンス」という。)に準拠し,WHO輸送ガイダンスのカテゴリーA又はカテゴリーBにて運搬しなければならない。
(管理区域の表示)
第12条 指定実験室の出入口には,別記様式第5号に定める事項を記載した国際バイオハザード標識を表示しなければならない。
(取扱者の要件)
第13条 取扱者は,指定実験室において実験を行おうとするときは,次に掲げる条件を満たさなければならない。
(1) 使用する微生物等に関し,その生物学的性質,人体に対する病原性,安全な取扱い方法,起こり得るバイオハザード,取扱施設の構造,曝露発生等の緊急時処置等について,十分な知識を有し,かつ技術的修練を積まなければならない。
(2) 第18条に規定する定期の健康診断を受診しなければならない。
(微生物等の滅菌等の処置)
第14条 取扱者は,微生物等(微生物等に汚染された物及びそのおそれのある物を含む。)を実験終了後に廃棄処理しようとする時は,別表5に示した基本的事項に従い適切な消毒,滅菌方法で処理しなければならない。
(曝露及び曝露時の対応)
第15条 次に掲げる事態が発生したときは,これを曝露として取り扱うものとする。
(1) 外傷,吸入,粘膜被曝等により,レベル3の微生物等が取扱者の体内に入った可能性があるとき。
(2) 管理区域内の安全設備の機能に重大な欠陥が発見されたとき。
(3) レベル3の微生物等により,管理区域内が広範に汚染されたとき。
(4) 第18条及び第19条に規定する健康診断の結果,実験に用いたレベル3の微生物等による異常と診断されたとき又はレベル2の微生物等にあっても,実験に用いた微生物等による健康障害であることが曝露直後の報告等により明確に特定できるとき。
(5) 第22条第2項に規定する報告があったとき。
2 前項第1号から第5号までの曝露を発見した場合は,別に定める「金沢大学病原体等緊急時対応マニュアル」に基づいて速やかに所要の措置を講じなければならない。
(災害時の対応)
第16条 地震,火災その他の災害により,保有する微生物等による感染症が発生し,若しくはまん延した場合又は当該微生物等による感染症が発生し,若しくはまん延するおそれがある事態が生じた場合は,別に定める「金沢大学病原体等緊急時対応マニュアル」に基づいて速やかに所要の措置を講じなければならない。
2 学長は,地震又は火災等の災害による重大な被害が発生し,微生物等の安全管理に関しこの規程に定める措置のみでは充分でないと判断したときは,直ちに緊急対策本部を設置しなければならない。
3 地震又は火災等の災害による被害の防止対策及び大規模地震対策特別措置法(昭和53年6月15日法律第73号)第2条第13号に規定する警戒宣言(以下「警戒宣言」という。)が発せられた場合において講じなければならない措置は,「金沢大学病原体等緊急時対応マニュアル」に定めるもののほか,各部局等の消防計画の定めるところによる。
(緊急対策本部の構成等)
第17条 前条第2項に規定する緊急対策本部は,学長,委員会の委員及び学長が指名する者をもって構成する。
2 緊急対策本部に本部長を置き,学長をもって充てる。
3 緊急対策本部は,次の事項を指揮し,及び処理する。
(1) 被汚染者の処置に関すること。
(2) 微生物等の逸出の防止対策に関すること。
(3) 汚染防止並びに汚染された場所及び物の処置に関すること。
(4) 汚染区域の指定に関すること。
(5) 汚染区域の安全性調査及び汚染区域の解除に関すること。
(6) 広報活動に関すること。
(7) その他緊急事態における微生物等の安全管理に関し必要なこと。
4 本部長は,微生物等に関する安全性が確認され緊急事態が解消したときに,緊急対策本部を解散する。
第4章 健康管理
(定期の健康診断)
第18条 学長は,レベル2以上の微生物等の取扱者に対して,少なくとも年1回,定期の健康診断を実施しなければならない。
(臨時の健康診断)
第19条 学長は,必要と認める場合には,取扱者及び微生物等に感染したおそれのある者に対して臨時の健康診断を受けさせることができる。
(健康診断後の措置)
第20条 学長は,健康診断の結果,当該健康診断を受診した者(以下「受診者」という。)にレベル2又はレベル3の微生物等による感染が疑われるときには,「金沢大学病原体等緊急時対応マニュアル」に基づいて速やかに所要の措置を講ずるものとする。
(健康診断の記録)
第21条 学長は,受診者の健康診断の記録を作成しなければならない。
2 前項の記録は,受診後(受診者の異動又は退職(学生にあっては,卒業又は退学)の後も含む。)原則として5年間,これを保存しなければならない。ただし,取り扱った微生物等の潜伏期間が短いものについては,この限りではない。
第5章 その他
(遵守義務)
第22条 取扱者は,微生物等の取扱いについて,安全管理の重要性を十分理解し,この規程を遵守するとともに,感染症法,家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号),輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号),遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号),動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)等の関連法規に定められた規定を遵守しなければならない。
2 取扱者は,実験?検査に用いた微生物等による感染症が疑われる場合は,取扱責任者を通して関係者に自ら申し出る義務を負う。
3 取扱者は,この規程の定めるところによらなければ微生物等を取り扱うことはできない。
4 取扱者は,この規程に反する重大な事項に気づいた場合は,委員会に報告しなければならない。
(雑則)
第23条 この規程に定めるもののほか,微生物等の取扱いに関し必要な事項は,委員長が別に定める。
附 則
この規程は,平成16年11月26日から施行する。
附 則
この規程は,平成20年12月5日から施行する。
附 則
この規程は,令和4年4月1日から施行する。
附 則
この規程は,令和7年2月1日から施行する。
別表1
 微生物等の取扱いにおいては,微生物等のリスク群分類(付表1―1)を基準として,付表1―2に示した各項目をリスク評価し,微生物等のバイオセーフティレベル(BSL)分類を定め,これに対応する実験手技と安全機器(付表2)及び実験室の設備(付表3)を適用することで,微生物等取扱者と以下に掲げる関連者の安全を確保する。また,実験動物における微生物等の取扱いについても同様とする。
付表1―1 微生物等のリスク群による分類
 本表においては,検定?検査?研究活動を行う実験室における通常の取扱量及び取扱方法を考慮し,ヒトへのリスクを基準として,微生物等を4つのリスク群に分類したものであり,家畜,環境,大量生産,バイオテロリズム対策など,それ以外の条件下における病原体等のリスク群分類としては利用できない。「微生物等取扱者」及び「関連者」(微生物等取扱者と感染の可能性がある接触が直接あるいは間接的に起こりうるその他の人々。)の健康への影響に基づき,WHOバイオセーフティ指針の考え方をもとにして分類されている。
リスク群1
(「微生物等取扱者」及び「関連者」に対するリスクがないか低リスク)
 ヒトあるいは動物に疾病を起こす見込みのないもの。
リスク群2
(「微生物等取扱者」に対する中等度リスク,「関連者」に対する低リスク)
 ヒトあるいは動物に感染すると疾病を起こし得るが,微生物等取扱者や関連者に対し,重大な健康被害を起こす見込みのないもの。また,実験室内の曝露が重篤な感染を時に起こすこともあるが,有効な治療法,予防法があり,関連者への伝播のリスクが低いもの。
リスク群3
(「微生物等取扱者」に対する高リスク,「関連者」に対する低リスク)
 ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病を起こすが,通常,感染者から関連者への伝播の可能性が低いもの。有効な治療法,予防法があるもの。
リスク群4
(「微生物等取扱者」及び「関連者」に対する高リスク)
 ヒトあるいは動物に感染すると重篤な疾病を起こし,感染者から関連者への伝播が直接または間接に起こり得るもの。通常,有効な治療法,予防法がないもの。
付表1―2 リスク評価項目
 微生物等を実験室内で取り扱う場合の微生物等の取扱いの具体的なバイオセーフティレベル(BSL)分類は,付表1―1(微生物等のリスク群による分類)を参照に,WHOバイオセーフティ指針の考え方をもとにして,以下の各項目をリスク評価して決定する。
1 取り扱う微生物等の病原性(量,取扱い条件も考慮する)。
2 微生物等の取扱い様式(エアロゾル発生の有無を考慮する)。
3 取り扱う微生物等が国内に常在するか否か。
4 取り扱う微生物等の伝播様式と宿主域(取扱い微生物等に対する免疫状況,宿主集団の密度及び移動,媒介動物の存在,衛生状況も考慮する)。
5 有効な予防対策法をとることができるか否か(予防接種等による予防,衛生対策,宿主動物または媒介動物対策も考慮する)。
6 有効な治療法がありそれを受けることができるか否か(血清療法,曝露後ワクチン接種及び,抗菌剤,抗ウイルス剤,その他の化学療法剤も考慮する)。
7 薬剤耐性株の出現の可能性。
8 院内感染の重要な微生物等であるか否か。
註: 本安全管理規程では,
1) 国内に常在しない微生物等についてはより高いBSLに分類する場合がある。
2) 臨床検体及び診断用検体の取扱いは通常BSL2で行う。ただし,臨床診断等からよりリスクの高い微生物等が原因として疑われるときは,より高いBSLで扱うことを考慮する。
3) この分類において,「動物」は実験動物とする。
付表1―3 動物実験におけるリスク評価項目
 微生物等を用いた動物実験においては,付表1―2に以下の項目を加え,実験動物及びヒトへの感染のリスク評価を行い,動物バイオセーフティレベル(ABSL)分類を決定する。
1 取り扱う微生物等の実験動物間での感染?伝播様式
2 取り扱う微生物等を実験動物に接種する場合の感受性
3 接種した微生物等の体外への排出機構及びその量
4 感染動物が野外へ出た場合,同種野生動物への感染及びヒトへの伝播
註: 感染を伴わない毒素接種による検査については別途考慮する。
付表2 (実験手技と安全機器)
 微生物等のリスク群分類と,実験室のBSL分類,実験室使用目的,実験手技及び安全機器との関連性
 微生物等を取り扱う実験室は,基本的なバイオセーフティレベルである実験室(BSL1及びBSL2)と,封じ込め実験室(BSL3),高度封じ込め実験室(BSL4)のいずれかに分類される。BSL1~4実験室の分類は,実験室の設計上の特徴,建築法,封じ込め設備,実験室内に設置される機器,実験手技や機器の運用方法に基づき決定される。付表2実験手技と安全機器は,微生物等を取扱う際に必要な実験室のBSLを決定するための基準と,微生物等のリスク群との関連性を示したものである。ただし,微生物等の取扱いBSLは複数の要因を複合的に判断して決定するため,微生物等のリスク群と使用すべき実験室のBSLは,厳密に1対1対応するものではない。
微生物等リスク群実験室のBSL実験室の使用目的実験手技及び運用実験室の安全機器
1基本実験室―BSL1教育,研究GMT特になし(開放型実験台)
2基本実験室―BSL2一般診断検査,研究GMT,防護服,国際バイオハザード標識表示微生物等の取扱いはBSCで行う
3封じ込め実験室―BSL3特殊診断検査,研究上記BSL2の各項目,専用防護服,立入制限,一方向性の気流微生物等の取扱いの全操作をBSCあるいは,その他の一次封じ込め装置を用いて行う
4高度封じ込め実験室―BSL4高度診断検査上記BSL3の各項目,エアロックを通っての入室,退出時シャワー,専用廃棄物処理クラスIIIBSCまたは,陽圧スーツとクラスIIBSCに加え,両面オートクレーブ,給排気はフィルター濾過
* 略語:BSC:生物学用安全キャビネット,GMT:標準微生物学実験手技
付表3 (実験室の安全設備)
BSL実験室の安全設備基準
 BSL
1234
実験室の独立性*1不要不要必要必要
汚染除去時の実験室気密性不要不要不要必要
換気:
内側への気流不要不要必要必要
制御換気系不要不要必要必要
排気のHEPA濾過不要不要必要必要
入口部二重ドア(インターロック*2)不要不要必要必要
エアロック*3不要不要不要必要
エアロック+シャワー不要不要不要必要
前室*4不要不要必要必要*5
排水処理*6不要不要必要必要
オートクレーブ:
管理区域内不要必要必要必要
実験室内不要望ましい必要必要
両面オートクレーブ不要不要望ましい必要
生物学用安全キャビネット不要必要*7必要必要
作業従事者の安全監視機能*8不要不要必要必要
*1 施設内の通常の人の流れからの実質的,機能的隔離
*2 二重ドアで構成される部屋は前室に相当する。なお,インターロックドアとは同時に2枚の扉が開放されないような機構を有するドアのことをいう。
*3 エアロックとは気圧を保つために設ける機構のこと。通常は複数の扉を設け,インターロックドアとなっている。
*4 実験室につながる隣室。
*5 BSL4実験室の前室は,入口部二重ドア,エアロック,エアロック+シャワーが相当する。
*6 一般排水処理とは異なる消毒滅菌処理のことをいう。
*7 エアロゾルの発生のおそれがある場合は,安全キャビネットが必要。
*8 例えば,観察用窓,監視カメラ,インターフォン,双方向性モニター設備など。
付表4 (ABSL動物実験室の安全設備基準)
 微生物等取扱い動物実験施設のABSL分類,実験手技,安全機器および設備基準
 ABSL1~4の動物実験を実施し,また動物実験施設を運営するために,各ABSLに対応する実験手技,安全機器および設備基準について下表にまとめた。なお,標準動物実験手技とは「金沢大学動物実験規程」に従う標準的な実験手技とする。
ABSL実験手技安全機器設備基準
1通常の動物実験の条件として,
?標準動物実験手技
?標準微生物実験手技
?専用服
を要する。
特になし通常の動物実験設備の条件として,
?動物実験施設の独立性
?立入者の管理
?動物逸走防止対策
?昆虫?野鼠等の侵入防止
?室内,飼育装置などの洗浄?消毒可能な仕様
を要する。
2ABSL1の要件に加え,
?防護服
?国際バイオハザード標識表示
?糞尿?ケージ等の滅菌処理,移動用密閉容器
を要する。
エアロゾル発生の恐れがある場合は陰圧飼育装置及びBSC,動物実験施設内にオートクレーブABSL1の要件に加え,
?立入者の制限
?動物安全管理区域からの動物逸走防止対策
を要する。
3ABSL2の要件に加え,
?専用防護服及び履物
?2重以上の気密容器による移動
を要する。
全操作BSC使用
飼育は動物飼育用BSC,グローブボックス,またはアイソレーションラックを使用
動物安全管理区域内にオートクレーブ
ABSL2の要件に加え,
?立入者の記録
?出入口インターロック
?前室の設置
?気流の一方向性
?排気のHEPAろ過
?作業者の安全監視機能
を要する。
4ABSL3の要件及びその他はBSL4に準じるABSL3の要件及びその他はBSL4に準じるABSL3の要件及びその他はBSL4に準じる
* 略語:BSC:生物学用安全キャビネット
別表2
  
  

別表3
微生物等取扱実験室の安全設備及び運営基準
BSL1
 (1) 通常の微生物学実験室を用い,特別の隔離の必要はない。
 (2) 一般外来者は当該部の管理者(実験室等運営責任者)の許可及び管理者が指定した立ち会いのもと立ち入ることができる。
BSL2
 (1) 通常の微生物学実験室を限定した上で用いる。
 (2) エアロゾル発生のおそれのある微生物等の実験は必ず生物学用安全キャビネットの中で行う。
 (3) オートクレーブは実験室内,ないし前室(実験室につながる隣室)あるいはさらにその周囲の部屋に設置し使用する。できるだけ実験室内に置くことが望ましい。
 (4) 実験室の入り口には国際バイオハザード標識を表示する。
 (5) 実験室の入り口は施錠できるようにする。
 (6) 実験室のドアは常時閉め,一般外来者の立入りを制限する。
BSL3
 (1) BSL3区域は,他の区域から実質的,機能的に隔離し,二重ドアにより外部と隔離された実験室を用いる。
 (2) 実験室の壁,床,天井,作業台等の表面は洗浄及び消毒可能なようにする。
 (3) ガス滅菌が行える程度の気密性を有すること。
 (4) 給排気系を調節することにより,常に外部から実験室内に空気の流入が行われるようにする。
 (5) 実験室からの排気はヘパフィルターで濾過してから大気中に放出する。
 (6) 実験室からの排水は消毒薬またはオートクレーブで処理してから一般下水に放出する。
 (7) 微生物等を用いる実験は,生物学用安全キャビネットの中で行う。
 (8) オートクレーブは実験室内に置く。
 (9) 実験室の入り口には国際バイオハザード標識を表示する。
 (10) BSL3区域の入り口は施錠できるようにする。
 (11) 入室を許可された職員名簿に記載された者及び管理に関わる者以外の立入りを禁止する。
BSL4
 (1) BSL4区域は他の区域から実質的,機能的隔離を行い独立した区域とし,BSL4実験室を取り囲むサポート域を設ける。また,独立した機器室,排水処理施設,管理室を設ける。
 (2) 実験室の壁,床,天井はすべて耐水性かつ気密性のものとし,これらを貫通する部分(給排気管,電気配線,ガス,水道管等)も気密構造とする。
 (3) 実験室への出入口には,エアロックとシャワー室を設ける。
 (4) 実験室内の気圧は隔離の程度に応じて,気圧差を設け,高度の隔離域から,低度の隔離域へ,又低度の隔離域からサポート域へ空気が流出しないようにする。
 (5) 実験室への給気は,1層のヘパフィルターを通す。実験室からの排気は2層のヘパフィルターを通して,外部に出す。この排気濾過装置は予備を含めて2組設ける。
 (6) 実験室内の滅菌を必要とする廃棄物等の滅菌のために,実験室とサポート域の間には両面オートクレーブを設ける。
 (7) 実験室からの排水は専用オートクレーブにより121℃以上に加熱滅菌し,冷却した後,専用排水消毒処理装置でさらに処理してから,一般下水へ放出する。
 (8) 実験は完全密閉式のグローブボックス型安全キャビネット(クラスIII安全キャビネット)の中で行う。
 (9) BSL4区域の入り口は施錠できるようにする。
 (10) 入室を許可された職員名簿に記載された者及び管理に関わる者以外の立入りを禁止する。
別表4
微生物等取扱動物実験施設の安全設備及び運営基準
 ABSL1の動物実験は通常の動物実験施設,ABSL2以上の動物実験は動物実験施設内感染動物実験安全管理区域 (動物安全管理区域)で行う。
ABSL1
 (1) 通常の実験室とは独立していること。一般外来者の立入りを禁止する。
 (2) 防護服等を着用する。
 (3) 標準作業手順書を作成し,周知する。
 (4) 従事者は微生物等及び動物の取り扱い手技に習熟していること。
 (5) 動物実験施設への昆虫や野鼠の侵入を防御する。
 (6) 動物実験施設からの動物逸走防止対策を講じる。
 (7) 実験施設の壁?床?天井,作業台,飼育装置等の表面は洗浄及び消毒可能なようにする。
ABSL2
 (1) 入室は認可された者に限る。
 (2) 入り口は施錠できるようにする(動物実験施設の入り口でも可)。
 (3) 動物安全管理区域の入り口には国際バイオハザード標識を表示する。
 (4) 動物安全管理区域内の飼育室等には動物種に応じた逸走防止対策を講じる。
 (5) エアロゾル発生のおそれのある操作は生物学用安全キャビネット又は陰圧アイソレーターの中で行う。感染動物がエアロゾルを発生するおそれがある場合は飼育も含める。
 (6) 糞尿,使用後の床敷?ケージなどは廃棄または洗浄する前に滅菌する。
 (7) 動物実験施設内にオートクレーブを設置する。
 (8) 滅菌を必要とする廃棄物等は密閉容器に入れて移動する。
 (9) 個人防護装備を着用する。
 (10) 手洗い器を設置する。
 (11) メス,注射針など鋭利なものの取り扱いに注意する。
ABSL3
 (1) 入室は認可された者に限る。
 (2) 動物安全管理区域の入り口は2重のドアになっていること。
 (3) 動物安全管理区域の入り口には国際バイオハザード標識を表示する。
 (4) ガス滅菌が行える程度の気密性を有すること。
 (5) 給排気系を調節することにより,常に外部から飼育室等内部に空気の流入が行われるようにする。
 (6) 排気はヘパフィルターで濾過してから大気中に放出する。
 (7) 排水は消毒薬またはオートクレーブで処理してから排出する。
 (8) オートクレーブを動物安全管理区域内に設置する。
 (9) 滅菌を必要とする廃棄物等は動物安全管理区域内で滅菌する。
 (10) 全操作及び飼育を生物学用安全キャビネット又は陰圧アイソレーターの中で行う。
ABSL4
 (1) BSL4に準拠する。
別表5
微生物等の取扱いの日常安全管理(基本的事項)
 微生物等の取扱いにおける安全管理の基本は,適切な微生物等取扱習慣であり,安全設備はこれを補強することはあってもこれに代わりえない。以下に微生物等取扱における基本的な事項を示す。主としてBSL2以上の微生物等を取り扱う場合に当てはまる事項であるが,BSL1の細菌にも日和見感染症の原因菌等が含まれている。したがって,BSL1の微生物等においてもここに示した注意が必要である。
 1) 口を使ってのピペット操作は行わない。
 2) 微生物等の管理区域内で,飲食,喫煙,食物の保管,化粧品の塗布を行わない。
 3) 微生物等の管理区域内は整頓し,清潔に保つとともに,作業に関係ない機材は置かない。
 4) 作業台の表面は少なくとも1日に1回は消毒するとともに,微生物等が接触または溢れ出た場合には,その都度消毒する。
 5) 作業が終了し,作業区域を出る場合,及び感染性の材料又は動物を取り扱った後は必ず手を洗う。
 6) 実験手順を立案するに当たっては,エアロゾル発生の最も少ない方式を最優先する。
 7) 汚染した液体又は固体は,廃棄前に必ず滅菌又は消毒する。
 8) 管理区域内では,専用の実験衣やガウンを着用する。また,汚染した衣服は適切な方法で消毒又は滅菌する。
 9) 顔面や服を汚染飛沫又は衝突物から守るために,必要であれば保護眼鏡,顔面スクリーン,その他の保護具を着用する。
 10) 微生物等の安全管理について教育を受け,一定の知識を有してから微生物等の取扱作業に従事する。
 11) 昆虫及びネズミに対する駆除及び侵入阻止対策を講じておく。
 12) 進行中の作業に関係ない動物を実験室内に持ちこまない。
 13) 血液,感染性の材料,感染動物等を取り扱う場合には,必ず手袋を着用する。使用手袋は汚染面が皮膚に触れないように外し,他の汚染物と共に滅菌した後に廃棄する。
 14) 微生物等の保管は密封容器に入れ,施錠のできる保管庫で保管する。
 15) 滅菌は,121℃,15分以上の高圧蒸気滅菌又は同等以上の効果を有する方法によって行う。
 16) 消毒剤を用いる場合は,対象となる材料及び微生物等の種類に応じて,適切なものを選択する(例:一般的な手指消毒用として,逆性せっけんとエタノール又はクロルヘキシジンとエタノールの合剤を用いるなど)。
 17) 曝露等は直ちに取扱責任者に報告する。
別記様式第1号(第10条関係)
レベル2微生物等使用?保管届出書

別記様式第2号(第10条関係)
レベル2微生物等使用?保管終了届出書

別記様式第3号(第10条関係)
レベル3微生物等使用?保管申請書

別記様式第4号(第10条関係)
レベル3微生物等供与申請書

別記様式第5号(第12条関係)
国際バイオハザード標識

別記様式第6号(第9条関係)
レベル2微生物等使用?保管施設確認届出書

別記様式第7号(第9条関係)
レベル3微生物等使用?保管施設確認申請書

別記様式第8号(第9条関係)
レベル2,3微生物等使用?保管施設に係る実験室廃止届